ほいっとな
あと3話くらいかかるかもしれない・・・;
起承転結でいう、転に当たる話です。
*バクラさんが限りなくエロい人。何だかコミカル?
*ボキ★パラ全開!
*「バクラ君はそういうもの見ないもん!」という方は逃げてください、本気で
*許容できる方はどうぞ。
恋人が居るのかどうか。
どんな仕事をしているのか、
あの時の表情の真偽・・・などなど。
正直最初と疑問は何も解決していないといえる。
だがなんだが楽しい気分だった。
ここ数ヶ月、毎日のメールのやり取りしかないが、
それでも繋がっている、と思える。
家電量販店の前で出会ったあの日、
最初に出会った時は一杯一杯だったが、
あの日は遊戯という存在を近くに感じられた。
彼女のさまざまな表情をみて、確信できた。
自分は彼女、武藤遊戯が好きだ、と。
同僚に言えば「狐につままれたのではないのか?」といわれそうである。
無論まだ彼女のことを理解できたわけではないし、
向こうが自分をどう認識しているのかもわからない。だが、
誰にしたって欠点はあるものだ、それに付き合ってから「やっぱりちがう」と別れることはおかしなことじゃない。
今までまともに人を好きになったことが無かったアテムとしては、
初めて芽生えた「好き」という感情素直に受け止め、突き動かされたいと思う。
そんなアテムの足取りは軽く、
駅の反対側に建っているマンションへと入っていった。
7階の東側の部屋の呼び鈴を連打する。
すると、携帯電話が鳴り出す。
相手の名前をみても、残念、遊戯ではない。
代わりに表示されている名前をみてげんなりしながら出る。
無愛想な声。
『どちらサマ?』
「俺じゃなかったらどうしたんだ?」
『連打するようなやつはお前しかねぇよ。』
「電話をする暇があればさっさと玄関まで来い。」
『めんどくせー。で、用件は?』
「DVDの返却を要求する。」
『なんだっけ?』
「八つ墓村。」
『あーあれか、りょーかい。鍵開いてっから。』
ブツリと切れる。
ドアノブに手をかけると普通に開いた。
「(無用心な・・・。)」
この部屋は汚い。
いや、典型的な一人暮らしの男の部屋というべきか。
「昼間から何をしていたんだ・・・。」
「なんだっていいだろ?」
玄関から男の座っている場所までおよそ8m。
机の上には大量の食料、トレーディングカード、
さらに次世代ゲーム機がフル稼働で、
更には堂々と、いや、一応隠されてはいるのだが、
お子様厳禁のDVDが置いてある。
適当に椅子を見つけて座った。
「有意義な休日だな。」
「他の何が有意義になりうるんだか。貴重な休日だぜ?」
男は振り向きもしない。
発売延期になっていたゲームにお熱なようだ。
「サボってばかりいるのかと思っていたが。」
「そこまで怠惰じゃねぇよ。時間厳守がモットーなくらいだからな。」
「帰宅時間に関しては、だろ?で、DVD。」
「ほらよ。」
漸くコントローラーから手を離し、
ラックの上に置いてあったDVDを渡してきた。
「王サマ、『悪魔の手毬唄』持ってるか?」
「当然だ。」
そういうと、手をヒョイヒョイと振って、今度持ってくるよう要求。
「取りに来い。」
「俺は休日を有意義に過ごす人間なんだよ。」
「勝手にしろ。」
この男とのやり取りはこんなもんだ。
高校、大学と同じだったせいか、気心は知れているし、
仕事の関係でも時折顔を合わせるし、
近況を報告しあう間柄でもない。
アテムはDVDを持って、自宅まで再び歩いて帰った。
今日は遊戯は仕事だといっていた、街へ行っても会えないだろう。
炭酸飲料などでも飲みながら『八つ墓村』でも見ようと、
途中の自販機で缶を買い、
玄関のドアを開ける。
先の部屋とは全く異なる家。
週に一日掃除している程度だが整理整頓されている分、綺麗に見える。
広いが一人しか住んでいないし、殆ど外に出ているということもあるだろう。
窓をあけると新鮮な空気が入ってきて、
気分良くテレビの前に陣取る。
くつろいでからDVDを開ける。
「?」
ピンクのラベル。
八つ墓村のDVDがピンクだった記憶は無い。
訝しげに文字を見ると、
『楓のハニースクール2~秘密の放課後~』
と書かれている。
そこで思い出したのは、あの時机の上にあったDVDのことだ。
「・・・何故それが此所に・・・。」
あの男の嫌がらせか、或いは本当に間違えたのか。
自発的に借りたことはない系統のDVDだが、
昔は人の家で見たことがある。
ただ何がいいのかさっぱり判らず、自分は男として機能するのかと悩んだ時期もあった。
特に何も貼られていないし、レンタルではなさそうだ。
この手のものをあの男が購入するとは、余程お気に入りと見た。
そこで冷やかしてやろうと、再生を試みた。
フリーズした。
著作権云々、メーカーのロゴの後で、
タイトル画面でだぼだぼのセーターに、チェックのスカート、
恐らく高校生の制服を模したものを着ている人物に見覚えがあった。
短い丈だがギリギリ見えぬよう、カメラの位置も計算されているらしい。
暫くすると西日の差し込む教室が映し出される。
見覚えのある人物は窓際に立っていて、くるりと振り返る。
僅かに驚いたあとで、ふわっと笑い、「どうしたの?」と声をかけてくる。
優しい声に聞き覚えがある。
体は固まり動かない。
少し伸ばせば届く位置にあるリモコンをとることすら出来なかった。
別人だ。
ぱっと、解凍中の頭に思い浮かんだ。
だが、空似にしては似すぎている。
声まで似るものか。
「・・・遊戯なのか・・・?」
漸く声を出せるようになったとき、
画面の中のその人は、見知らぬ男と口付けていた。
何が何だかわからない。
それが率直な感想であった。
何故遊戯がそこにいるのか。
本当に遊戯なのか。
後者の疑問には、頷くしかなかった。
見間違えるわけが無いという自信があったのだ。
たとえ名前が違っていても、見抜ける自信があった。
では前者はどうなのか。
さっきの部屋へ再び向かった。
エレベータの中から電話をする。
『なんだよ、仕事が速ぇな。』
「玄関は?」
『開いてる。』
「じゃあいい。」
今度はチャイムも押さずに突入していった。
たぶんこの時のアテムは詐欺師さえ騙せるほどの演技だった。
知られてはいけないという本能だった。
だるそうに振り向いた男に、『悪魔の手毬唄』のケースをちらつかせる。
「さすがやること速いな・・お借りするぜ。」
「その前に中身の確認をしておこうか。」
「?」
パカっと開いた黒いケースの中にはピンクのラベルが見える。
目を凝らし文字を読むなり、
ゲーム呆けしていた男の顔から血の気が引いた。目に見えてわかった。
「・・・なんでそれをお前が持ってんだよ・・・。」
「返却しに来た。」
男はうわああぁぁぁと叫んだ後、崩れ落ちた。
「ああいう子が好みだったか?」
「ちょ、ちょま、マジで!?・・・見たのか・・・?」
「見た。途中までだがな。」
「・・・よりによっててめぇに知られるとはな・・・。」
高校時代、友人の家で何処からか手に入れたこの手のビデオを見たときも、
確かこの男は一緒にいたが、
清楚なのは守備範囲外だったと思った。
「守備範囲が変わったのか?」
「いや、それがだな・・・。」
男、いい加減に名を出せば、バクラというのだが、
潔くセーブをして、ゲーム機の電源を切り、此方になおる。
「まぁなんだ、長い話になるわけだが。
・・・その前に、間違えて入れたことは詫びておくぜ。」
わざと、では無かったらしい。
アテムと遊戯の関係を知っているわけではないようだ。
「開けた時は驚いたが、それ以上にお前がこの手のものを購入した、
というのが意外だったぜ。」
「俺自身もまさか買うとは思ってなかったぜ。
だが、コイツはやばい。見ただろ?楓。」
「ああ。可愛いと思うぜ。」
「そーなんだよ、いやな、あんまりにも暇だったんで、
レンタルショップを徘徊してたら、偶然見つけたわけよ。」
彼はかく語りき。
レンタルショップで偶然見つけた企画物の年齢認証必須のDVD。
そこに偶然入っていたのが須藤楓なる新人だった。
見た瞬間に「コレは来る、っつーかすげぇ可愛い」と思った。
そこでいそいそと情報収集をしたところ、それがデビュー作らしい。
初々しさは新人ゆえだろう、と思っていたが、彼女の持つ素質らしく、
すれていない新鮮さがとても気に入った。
「ある種の運命だと思ったね。」
「そうか。で、直感は当たったのか?」
「大当たりとしか言いようがねぇ。もうすぐ2年だが、所属事務所の看板女優。
まぁ前のトップだった女優が引退したってのもあるだろうが。」
好きなことになると良く喋りだす。
立て板に水とはまさにこのことだった。
「そんなに売れているのなら普通に売り出せばいいんじゃないか?」
「俺もそう思うんだけどな、女優側にも色々あるんだろ。
そりゃあ好きで出てるやつも一杯いるだろうけどよ、
借金返す為に、とか店を持つためになんて理由もあるらしい。」
「かなり貰えるのか。」
「複数出てるものだと良くて10万くらいらしいが、単体になると200万くらい行くらしい。
ただ単体にすると出演出来る回数が限られてくるから、制作側が巧い具合にごまかしてんだろうな。
普通のアイドルでそこまで行くのは楽じゃないぜ?似たり寄ったりがゴマンといるからな。」
「妙に詳しいな。」
「此所まで俺を虜にするとはただもんじゃねぇと思ったからな。情報はかなり集めたぜ。」
「じゃあ須藤楓の本名はわからないのか?」
「・・・色々探ったんだが出てこねぇな。本名って線も考えたが、
前の看板女優が確か『森住サクラ』とかっていうで芸名だったし、
たぶん芸名だろう。」
遊戯の可能性は高い。いや、やっぱり遊戯なのだろう。
双子の姉妹がいるとも言っていなかったし、
祖父の店に愛着があったようだし・・・。
人の気など伺う様子も無く、バクラは喋り続けている。
「金銭的な問題があるとしても俺としてはアイドルデビューさせたほうがいいと思うわけよ。
今の仕事が向いてないってわけじゃねぇけど、今は目立つアイドルはいねぇし、
居たとしても楓の方が可愛いに決まってる。
それにさっさと今の事務所をやめて欲しいところだ。」
「何かあったのか?」
「まぁ噂なんだがよ、
あそこの事務所の社長がひでぇエロじじいで、前の女優とも個人的に関係があったらしい。
まだまだ売れてたのにいきなり引退だったんで、一部のファンも色々噂したみてぇだ。
俺の楓もそのエロじじいの気持ち悪ぃ視線を浴びてるのかと思うと、
不憫でしかたがねぇってわけ。」
「なるほどな。」
俺の楓、というのはいただけなかったが、怪しいと思った。
「王サマが珍しいじゃねぇか、食いついてくるなんてよ。」
「お前にしては趣味がいいと思っただけだ。」
「珍しいじゃねぇか。高校から淡白そうな割りに。」
「珍しいのはお互い様だ。それより俺の『八つ墓村』は?」
良く動いていた口が固まる。
「見てないんだろ?」
「見ようと試みたんだが、色々邪魔がはいってな。」
「どうせ、見ようとしたら、中には須藤楓のDVDがはいっていて思わず見てしまい、見逃したってとこか。」
「そこまで読んでんなら訊くなよ。」
「来週取りに来る。」
アテムは『悪魔の手毬唄』を持って再び帰宅した。
その脚に今朝あったはずの軽快さはない。
テレビの前の椅子にどっかりと腰を下ろして、
何も映っていないテレビを眺めた。
「遊戯が・・・まさか・・・。」
あんなに可憐で清楚な遊戯が・・・。
持ち帰ったケースを開けると、中身を返し忘れていた、
まだピンクのラベルのDVDがはいったままだ。
何を思ったのか、再びそれを再生する。
前と同じく夕日の中、窓際で振り向く遊戯。
一時停止。
巻き戻し。
再生。
一時停止。
はっとした。
もう一度巻き戻し、再生する。
そしてゆっくりと振り返るその一瞬を逃さず一時停止した。
あの日の、別れ際の寂しそうな顔、
記憶の中のそれと全く同じ顔が映し出されている。
「遊戯・・・。」
再び再生する。適当に早く回す。
内容はさっぱり頭に入ってこない。見たくないのが本音ではあるが。
だが、また別のシーンを探し、一時停止する。
助けたい。
アテムがそう思ったのは、何もこの職業に対する軽蔑によるものではない。
ただ、見つからなかったのだ。
彼女の、本当の笑顔。
ふとした表情は全てあの寂しそうな顔ばかりで、
ゲームセンターで見せてくれたような、純粋な笑みがそこには無い。
それは彼女無意識のうちに見せる本心なのではないだろうか。
論理的に物事を考えるアテムにとって、この判断はあまりに主観的だった。
ふとバクラの言葉がよみがえる。
金銭的な問題を抱えているのだろうか。
そうしたら自分がやろうとしていることは余計なお世話である。
だが、本能は囁く。
この映像の中の遊戯は、本物の遊戯ではない、と。
無理をしている偽者だと。
エゴだとはわかっている。
それでもアテムを突き動かす。
PCの電源を入れ、デスクにつく。
傍らのTVには、
偽物の笑顔が写っていた。
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男の子だもの、見たっていいじゃない
PR
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